新薬ができるまでの流れ

新薬について

新しい薬、新薬ができるまでの流れはどのようになっているのでしょうか。
薬というのは基本的には化学物質であり、新しい薬とはすなわち新しい化学物質ということになります。

そして、そのような化学物質が新しく作られるのは、言うまでもなく実験室や研究室ということになるでしょう。
実際には世界各国にある大学や研究機関の実験室とか、製薬会社の実験室などがその舞台となります。

もちろん、ここで生み出されるのは単に新しい化学物質というだけの意味に過ぎません。
それが本当に薬として有効なのかということは、最初は何も分からないのが実情です。

そこで、本当に薬として有効そうなのかを確かめることも実は実験や研究の一環です。
様々な化学実験を行うなどして、その化学物質が本当に薬として有効そうなのかを確かめるわけです。
このイメージとしては、中学や高校などでも行った理科とか化学の実験の延長線上で思い浮かべていただければ結構です。

これで薬は出来上がるのでしょうか。
そうではありません。

いくら実験室レベルで試験管やガスバーナー、フラスコなどを用いて実験を繰り返したところで、それが本当に薬になるのかどうかについては、せいぜい当たりをつける程度のことしかできないのです。
実際に飲んで効くかどうかなど誰にも確かなことは言えません。

実際に動物を使ってその化学物質を飲ませてみる

そこで、新薬の研究は次の段階に移ります。
ここまでは理科や化学の実験の延長線上にあるようなものでしたが、ここからは異なり、実際に動物を使ってその化学物質を飲ませてみるのです。

いわゆる動物実験です。
使われる動物の種類としては、扱いやすく繁殖もさせやすいということからマウスやラットといった動物のほか、イヌ、あるいは人間と同じ霊長類ということでサルなどが用いられることもあります。

もちろんこれらの動物は人間の言葉を話せるわけではありませんから、薬が効いたかどうかを言葉で伝えるようなことはできませんが、血液検査をするなどして効き目を調べることは可能ですし、動物の動きやしぐさなどから効き目を推定できることもあります。

この動物実験は新薬を生み出すための重要な段階ではあるのですが、動物に苦痛を与えることになりますし、苦痛どころか場合によっては最後には殺して肝臓や腎臓そのほかの臓器を取り出し、投与された薬がどの臓器に多く移行しているかどうかを調べるようなことまで行われます。

動物愛護の観点からは決して好ましいこととは言えないかもしれない

これは人間のためとはいえ、動物愛護の観点からは決して好ましいこととは言えないかもしれません。
ただ、誤解のないように言っておきますと、人間は多くの動物を食べるために殺しますし、それは人間以外の他の動物も同じでしょう。

食べることは自然の摂理だから問題ではないが、新しい薬を作るためという理由は自然の摂理に反しているというもっともらしい理由をつけることは簡単ですが、一括りに言ってしまうとどちらも人間の勝手というかエゴであることもまた言い逃れのしようのないことでしょう。

それはともかくとして、確かに無用に動物に苦痛を与えたり、ましてや命を奪ったりすることは、避けることができるものなら避けたほうが良いことは誰も反対はしません。
そのため、最近では動物の個体を用いるのではなく、動物の細胞を用いてそれに候補となる化学物質を作用させ、効き目がありそうかを確かめるようなことも行われています。

動物で効いたからと言って人間でも同じように効くとは保証できない

さて、ここまで来て、動物では十分に薬になりそうだということが分かったとしましょう。
これで晴れて薬になるのでしょうか。
残念ながらそうではありません。

動物と人間とではやはり違いがあります。
動物で効いたからと言って人間でも同じように効くとは保証できないからです。

となると、もう最後の手段としては実際に人間に飲んでもらい、本当に薬としての効き目があるのかを確かめてみるしかないのではないかと思うことでしょう。

そんな無茶な、まだ薬として本当に効き目があるか、副作用はないのかも分かっていないものを人間に飲ませるなど、それこそ倫理的に大問題ではないかと言われるかもしれません。

これはある意味でそのとおりです。
動物で効いて、副作用も実験の範囲では問題なさそうなものであっても、本当に好き好んでそれを飲みたがる人がいるでしょうか。
いないかもしれませんし、自分は嫌だという人に無理やりに飲ませるようなことは人権上の大問題になってしまいます。

ですが一方で先ほども書いたように、最後にはその手段しかないこともまた事実です。
言ってみれば人類はその板挟み状態にあるのです。

そこで、内容や目的をしっかりと説明して理解いただいた上で、あくまでも自分の自由意志としてその候補化合物を飲んでみてもよいと同意した人にだけ、飲んでもらって効き目や副作用を確かめる一種の実験が行われるのです。

このような実験を行ったうえで、人に対しても本当に効き目があり、副作用も問題ない範囲内だと確かめられた化学物質だけが最終的に新薬として世の中に生み出されることになります。

 

参考文献

1.東洋新薬の研究開発体制